本、漫画、映画など

好き勝手に紹介します。

松浦だるま『累』

累(1) (イブニングコミックス)

 

 これは面白かった。

 醜い容姿を持って生まれたために、周囲の人間から嘲られ、虐げられてきた主人公、累。ある日、大女優であった亡き母の形見である不思議な口紅を見つける。

 この口紅、実は口紅をひいて口づけをした相手と自分の顔を一定時間顔を交換できるという力を持っている。口紅を使うことで、まわりにいる美しい顔を持った人間の顔を手に入れ、天性の演技力を生かし、累はようやく舞台の上で自分の居場所を見つけるのである。

 だが、もちろんその居場所は、本来の醜い顔を持った自分を受け入れる場所ではない。累は美しい顔を一時的ではあれ手に入れることで、醜いときとはまったく違う周囲の人間の態度や眼差しに気づき、醜いことは愛されないことだとつよく再確認してしまうのだ。口紅を使うことで自分の居場所を手にする一方、あくまでも、その居場所は美しい偽りの顔を持ってようやく手に入れられるものなのであり、本来の醜い自分は人から受けれられ、愛されるものではないのだと強く実感していくのである。

 おそらく、この物語は、不思議な口紅によって美しさを手に入れる話でもあるが、外面の美しさではなく、本来の自分の容姿をどのように受け入れていくのかというテーマを持っているのではないか。

 主人公が醜い顔と美しい顔の両方を体験しているからこそ、外面的な美醜に左右される人間の心境が鋭く観察されている点が面白い。とびきりの美人も、そこそこの人間も、醜い人間も、それぞれが自分の容姿に振り回されて生きている。

 画もストーリーもすばらしい。まだ完結していないが、先が楽しみな漫画。