本、漫画、映画など

主に読んだ漫画の記録。

劔樹人『今日も妻のくつ下は、片方ない。 妻のほうが稼ぐので僕が主婦になりました』

今日も妻のくつ下は、片方ない。 妻のほうが稼ぐので僕が主夫になりました

 ミュージシャンとして食べることを目指すもかなわず、神聖かまってちゃんのマネージャーとなり、その後も音楽になんとか関わる仕事を続けるも軌道に乗ることはできない作者、劔樹人のコミックエッセイ。

 詳しくは本書にかかれないが、その状況を見かねた当時の彼女が、結婚しよう、そしてあなたは主夫をしながら自分のやりたいことをやれ、と申し出、作者の主夫生活がスタートする。

 主夫でいることに引け目を感じたり、主夫でいることに楽しみを見つけたりしながら過ぎて行く日々が描かれる。ちなみに、作者の妻となったのは、エッセイストなどで有名な犬山紙子。

 ばりばり仕事をする妻と、完全に家事の一切を担当する夫。夜帰って来た妻に、夜食を作ってと頼まれれば作るし、朝の支度の手伝いもする。作者はまったく、良い「主婦」像をまっとうしているように見える。妻が随分主夫の夫に尽くされているように見えるが、これ、けっこう世の主婦たちが主婦としてこなしていることなのだろうか。最近の主婦というものが、想像つかないのでわからない。

 いつもどこか困った顔で描かれる漫画の中の劔さん。

 これでいいのかなあ、これもいいよなあ。そういうものがあい混じるように見えるその姿は、リアルな「主婦/夫」像なのかもしれない。

今日も妻のくつ下は、片方ない。 妻のほうが稼ぐので僕が主夫になりました

今日も妻のくつ下は、片方ない。 妻のほうが稼ぐので僕が主夫になりました

 

 

深谷かほる『カンナさーん!』

カンナさーん!【期間限定無料】 1 (クイーンズコミックスDIGITAL)

 amazonの、期間限定無料のコミックは、漫画好きのゴキブリホイホイである。
 あ〜今はこれが無料なのね、なるほどね、でも面白い気がしないなあ〜、ま、無料だし読んでみるか、と思えばそれが最後。まあ、かなりの確率でその後結局全巻読むはめになる。

 あたりまえである。私なんぞよりよっぽどかしこいamazonさんは、勝算があって無料にしているのだ。

 

 今回そうして手を出してしまったのが、現在渡辺直美主演でドラマをしている『カンナさーん!』。

 ドラマもちょっと見かけたことがあったので、面倒だし2巻から読み始める。

 まあなんだろう。端的に言って、なんだか作者が心配になるほどダメ男ばっかりの、ダメ男図鑑みたいな漫画で、出て来る男たちは顔はいいけど、中身がリアルに最悪だ。非常に複雑な思いになる。まあ、それぞれいいところもあって、憎みきれないのだが、微妙に読む者(私)の苦い過去を掘り起こすので憎たらしい。

 癒しはなんともかわいい息子のレオちゃん。カンナは正直おせっかいでガサツでデリカシーがないし、男たちはどうにもこうにもであるし、そんな中唯一のオアシスである。

 ああ〜もう〜と思いながら、ときには泣きじゃくりながら、気づいたら次の巻、次の巻、と読んでしまった。いやはや、まったく。消えた半日と数千円。

 まあ、楽しい漫画です。はい。

 

 ちなみに、似たような系統で、

 も、無料期間中に買って一気に読んでしまった漫画。こちらは、外見内面共にいけてる男が夫なので、安心感あります。非常に。たまーに、男に媚びるのがいい女じゃないだろっていう最初の主人公の考えが、おいおいどこいった? というようなつっこみどころはあるにせよ。

 

コナリミサト『凪のお暇』

凪のお暇 1 (A.L.C. DX)

 

 ネットの広告でやたらに見かけ、気になったので買ってみる。

 ネットの漫画の宣伝は、どういう話なんだろうと思って買ってみると、まったく広告の文句から抱いていたイメージとは違うことが多いので、はらはらしながら買う。過激な場面やセリフをきりとって、物語からそれていることが多いので、作品のおもしろいところを伝えられていない。結局、私だってそういった過激な断片によって買っているのだから、戦略としては良いのかもしれんが、作品がかわいそうというときもある。

 

 それはおいといて。

 『凪のお暇』はまあまあ面白い。

 主人公の凪は、空気を読むことに徹し、自分という人間を殺して生きる会社員、28歳。

 気が弱く、言いたいことも言えないので、同僚女子に雑務を仲良いふりしておしつけられる日々。他人のミスで怒られたりなんていうのもめずらしいことではなく、仕事面でもぱっとしない評価を与えられ、その一方で自分に雑務をさせる同僚はちゃっかり、いい仕事をするね、と上司に褒められていたり。さらには、昼休みには、凪は同僚女子たちのマウンティングのかっこうの餌食になるしまつ。

 それでもいいか、と諦めていた日々が続くが、ある日、同僚女子たちの自分への陰口を目の当たりにしてしまう凪。さらにその直後、社内でこっそりつきあっている営業エースの我聞が、自分のことを、体目的でつきあってるふりをしてるだけ、と男子社員だけで笑っているのを聞いてしまう。

 空気を読み、まわりの人間に合わせて生きてきたのに(あるいは、生きてきたから?)こんな仕打ち、とショックで凪は過呼吸の発作をおこし、その後、逃げるように退社。

 ストレスが限界に達して会社で過呼吸を起こしてしまったとき、凪は悟る。

「空気は読むものじゃなく吸って吐くもの」。

 冷蔵庫以外のものすべて、服も、ソファも机もベッドも、携帯電話も、SNSアカウントも、人間関係も捨てて、いったんそれまで歩んできた人生から「お暇」をもらうのである。

 

 もちろん、凪の、再出発に向けて、休みつつ、歩んでいく「お暇」の日々は、なにもかもがうまくすすむわけではない。無職の極貧節約生活(本人はけっこう楽しんでるが)だし、それなりにきわどい年齢であるし、元恋人(なのか?)の我聞は、凪の新しい住所を聞き出して、生まれ変わろうとする凪に、お前が生まれ変わるのは許さない、と宣戦布告をするのである。

 実は我聞、ひどいことを言いながら、凪のことが好きでたまらなかったというとんでもなく幼稚な男なのだが、一見営業のエースで空気を読むことに長けている彼も、なにか抱えているものがあって凪を求めているのだろう。

 はたしてこれから凪はどう変わっていくのか。

 

 ちょっと古臭い力の抜けた絵柄も懐かしくてかわいく、非常に女子好みの漫画ではないか、と思う。

 まだ2巻以後は出てないので、代わりに読んでみた短編集『恋する二日酔い』もなかなか。

恋する二日酔い

恋する二日酔い

 

 

二ノ宮知子『のだめカンタービレ』

のだめカンタービレ(1) (Kissコミックス)

 天才がその才能の真価を発揮せんと歩む姿が好きだ。

 『天才ファミリー・カンパニー』の記事でも書いたが、二ノ宮知子は天才を書くのがうまい。才能があって、やりたいことがはっきりしていて、突き進むことに迷わない、そんな天才たちを二ノ宮知子は、何度も描いてきたのではないかと思う。

 その中でもやっぱり『のだめカンタービレ』が一番好きなのは主人公ののだめが、悩み、逃げようとしていることすら自覚的になれず逃げようとし、そして挫折を味わうからである。

 いくら天才といえど、鍛錬することなしに、世界に通用することはできない。

 のだめは類稀な才能を持っているが、その才能が荒削りなままでは到達できない世界がある。

 千秋と出会うことによって、音楽の楽しさ、自分の才能の可能性を最大まで活かす喜びに目覚めていくのだめは、それでもなんども、その喜びを得るまでの厳しさに、立ち止まり、つまずき、逃げようとしてしまう。そうしながら徐々につよく、つよくなっていくのだめの姿を描いているところが、『のだめカンタービレ』が二ノ宮作品の中で一番光っている理由なんではないかと思う。

 お気に入りは、はじめてのピアノコンクールの後ののだめ。

 おちこんだときに何度も読み返してしまう。

のだめカンタービレ全25巻 完結セット (講談社コミックスキス)

のだめカンタービレ全25巻 完結セット (講談社コミックスキス)

 

 

 

二ノ宮知子『天才ファミリー・カンパニー』

天才ファミリー・カンパニー (1) (幻冬舎コミックス漫画文庫)

 

 人は天才に憧れるもの。

 二ノ宮知子は天才を描くのがとってもうまい。『のだめカンタービレ』がやっぱりそのなかでもピカイチと思うけど、『天才ファミリー・カンパニー』もまたよし。

 題材は、ビジネス、経済、そして少しハッキングといったところだろうか。 

 天才的頭脳を持つ主人公、夏木くんの母が、とんでもない男、(ほぼ無職、コブ付き)と再婚するところから始まる。どたばたのほほんとした家族ものかと思いきや、気づけば思わぬ事件に巻き込まれていくのである。

 ストーリーもいいけれど、キャラが皆いい味出している。のほほんとした無職なのに俺様ツンデレの主人公、異様な人脈の広さを持つ義理の父、脇役のくせにいい味を出す、うざいのに憎めない渋い趣味人、有吉。読んでて飽きません。

松浦だるま『累』

累(1) (イブニングコミックス)

 

 これは面白かった。

 醜い容姿を持って生まれたために、周囲の人間から嘲られ、虐げられてきた主人公、累。ある日、大女優であった亡き母の形見である不思議な口紅を見つける。

 この口紅、実は口紅をひいて口づけをした相手と自分の顔を一定時間顔を交換できるという力を持っている。口紅を使うことで、まわりにいる美しい顔を持った人間の顔を手に入れ、天性の演技力を生かし、累はようやく舞台の上で自分の居場所を見つけるのである。

 だが、もちろんその居場所は、本来の醜い顔を持った自分を受け入れる場所ではない。累は美しい顔を一時的ではあれ手に入れることで、醜いときとはまったく違う周囲の人間の態度や眼差しに気づき、醜いことは愛されないことだとつよく再確認してしまうのだ。口紅を使うことで自分の居場所を手にする一方、あくまでも、その居場所は美しい偽りの顔を持ってようやく手に入れられるものなのであり、本来の醜い自分は人から受けれられ、愛されるものではないのだと強く実感していくのである。

 おそらく、この物語は、不思議な口紅によって美しさを手に入れる話でもあるが、外面の美しさではなく、本来の自分の容姿をどのように受け入れていくのかというテーマを持っているのではないか。

 主人公が醜い顔と美しい顔の両方を体験しているからこそ、外面的な美醜に左右される人間の心境が鋭く観察されている点が面白い。とびきりの美人も、そこそこの人間も、醜い人間も、それぞれが自分の容姿に振り回されて生きている。

 画もストーリーもすばらしい。まだ完結していないが、先が楽しみな漫画。